子供の身体障害の特徴や対応について 肢体不自由編

こんにちは!
東京三鷹市のパーソナル水泳インストラクターの酒井やすはです。

今回は肢体不自由をテーマにお送りします。

簡単に言いますと、車いすや杖を使っている方、内部障害がある人のマークを付けている人のことです。
(視覚障害や聴覚障害については、別のページをご覧ください。)

「泳ぐ」こと、それ以上に「やっていてよかった!」と思う方も多いのです。
水泳とどうやって上手に付き合っていけるのか、プールでの介助の方法が分からない!方、必見です。

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こちらでは障害の表記を「障害」とさせていただきます。
福祉畑で働いていると、「表記よりも中身の方が大事だ」と思う反面、やはり気にされる方もいらっしゃると思うので、その理由を説明いたしますと、一つに私自身とその周りの方は表記よりも中身についてしっかり話し合う仲間が多い環境で生きてきたということと、音声読み上げソフトにかけた際に「障がい」表記では「さわりがい」等と誤った情報をお伝えしてしまうため、「障害」表記に統一させていただいております。

障害のあるなしに関わらず誰もが暮らしやすい社会となることを願い、お伝えしていきます。
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肢体不自由ってなあに?

体のどこかに不自由がある場合を身体障害と呼んでいます。
車イスや杖を使うような目に見える方もいれば、内臓に障害があって目で見ただけでは分からない方もいます。

目に障害がある場合を「視覚障害」、耳に障害がある場合を「聴覚障害」、内臓に障害がある場合を「内部障害」、手足や胴体に障害がある場合「肢体不自由」と呼びます。

人の体を胴体と腕脚と分けたとき、腕脚が生まれつき、または交通事故や病気で短い場合や指がないことを「短縮」「欠損」と呼ばれています。

また不随意運動と言って、本人の意志とは無関係に、無意識に震えてしまったり、体がよじれねじれを起こしたりすることがあります。アテトーゼと呼ばれるものもこれに当たります。

筋肉に力が入らなかったり、思うように動かせないものを「まひ」と言います。

原因はあるの?

交通事故や何らかの病気をしたり、薬の影響、生まれた直後の黄疸等、具体的な原因以外は、直接的な(根本的な)なぜそうなったのかという理由は分かっていませんが、何らかの理由で傷ついた骨の中の神経の束に影響が出て、その骨より下の体が動かなかったり動かしにくくなります。

先天性の障害の場合、生まれてすぐに保育器に入ることもあります。

例えばどんな特徴があるの?

肢体不自由の障害について詳しくみてみましょう。

二文脊椎ってなあに?

脊椎の管の一部分が縦に開いて生まれてきたため、神経が外に出て傷ついてマヒが起きています。起きている場所により、膝下が動かしにくく、装具と呼ばれる固定具をつけて歩く人から、下半身にマヒが起きて車イスで生活する方から様々です。

また、マヒがあることで温度や痛さ、トイレに行きたいことを感じにくい方もいます。
熱中症になりやすかったり、出血していることや火傷が分からなかったりして、怪我の対処の遅れや命の危険に及ぶこともあります。トイレを感じにくい方は、時間をみて定期的にトイレに行って、排泄もマヒがあることでしにくいので道具を使って済ませる方もいます。

先天的または交通事故等が原因で脊椎に障害が出ると「脊椎損傷」、首の骨に障害が出ると「頸椎損傷」と呼ばれます。

脳性まひってなあに?

脳の中には役割分担があります。その中の、運動に関わるところが何らかの理由で神経が壊れていたり、成長が遅れていたりで体を動かしにくい状態です。

程度も全身が緊張している方から、全く動かせない方から様々です。

口やあごにまひがあると、発生・発音しにくく、言葉が出にくかったり、50音表の特定の行が言いづらい等の「言語障害」と呼ばれる障害が出ます。

また手よりも脚が動きやすく、脚でペンを持って文字を書いたり編み物をしたりと、それぞれの工夫をして生活しています。

障害は一生続きますが、その程度や状態は変化していきます。

身体障害とともに心臓病や知的障害等を併せ持っていることもあります。

また姿勢がとりづらく、緊張によって体がねじれたりして骨が変形を起こすこともあり、それを予防するためにリハビリに通ったり、車いすにクッションをはさんで固定したりと工夫します。

分かり合える対応の仕方ってあるの?

日常生活場面でよくある出来事と、プール場面だからこそ気を付けたいことを挙げていきます。

日常生活の中で

不自由さは人それぞれなので、できることやりにくいこと、またそのスピードもまちまちです。
いきなり車イスを押すなどをすることは危険ですし失礼ですが、その人に聞きながら必要なときに必要な部分を手助けするようなマナーを守りながら行いたいものです。

座っていると、立っている人から威圧感を感じることもあるので、目線はできるだけ合わせます。

声をかけてから止まったり、進んだりと、初対面の方でも安心できる気配りは必要になります。

装具や杖、PCウォーカーと言う車輪つきの道具を使っている方は、私たちにとって何でもない段差も大きく感じられるので、足元の安全の配慮や、荷物を分担して持つなどが必要なことが多いです。

水泳をしたい!そんなときのあれこれ

プールに装具をつけていきたい・使いたい

まずは道具が水にぬれても大丈夫なものなのかを確認してから、プールでの持ち込みの相談をします。
杖などは外から中へそのままプールサイドまで使いたい方は多いと思います。
プールサイドは素足のため、なるべく小石や小枝などが落ちているのは誰しも避けたいものです。杖の先などを濡れぞうきんなどで拭いておけば、プールサイドの中でも許可をもらいやすくなります。特に目立ったものがなければ、プールに入る前のシャワーで流してそのままどうぞと通してもらえるプールもあります。
脚に装具を付けている方やPCウォーカーなどを使っている方も同様です。

また、持ち込んだ杖などをプールの中に沈めて使いたいなら、別途相談してください。

たいていの場合、杖や装具をプールサイドまで持ち込んだとき、一時的に杖や装具をプールサイドに置いておかなければなりません。他のお客さんの転倒の危険もあるので、いったん他の場所へ移す必要があるか否かも相談します。
他の場所へ移さなければならない場合は、プールに入るときに置いた杖や装具の置き方やプールサイドからの位置関係を覚えておくと、プールから上がるときにスムーズです。仮に誰かの手を一時的に借りるときでも、説明がしやすくなります。
各プールでルールが違います。予めどこに荷物を置いて良いか、プールや監視員さんに確認しておくとスムーズです。

トイレの時間を気にされる方のとき

排泄のための管や消毒綿をポーチなどに持っている方が多いと思います。
不安な方は、プールでのトイレの場所を確認したうえで、やりやすいトイレがあるか聞いてみましょう。
周りの方が知っておくと良いことの一つが、ご本人がそれを使うためトイレの時間が長くかかること、そしてご本人が気にしすぎることない雰囲気づくりです。
トイレタイムはプールの前に済ませるか、休憩時間を多目にとるなどして参加しやすくなります。

車いすを使う方のとき

プールに手動車いすが用意されているところもあります。
途中でご自身の車いすからの乗り換えができるのか、車いすの種類(ベルトの有無など)を確認したり、また乗り換えが厳しい方ならそのまま車輪を拭いてプールサイドまで行くことができる環境なのかも含めてあらかじめ相談しておきます。

車いすを準備して利用するとき、プールサイドは滑りにくくするために面がざらざらしていたり、タイルになっていたりすることが多く、車いすのブレーキを止めたまま後輪を動かしたり、横へスライドさせると車輪の消耗が早まります。ブレーキをしたままの移動の際は、後輪を必ず上げて前輪を床にしっかりついた状態で移動します。
ブレーキをかけてから車いすをたたむとき、片側の前輪後輪を上げてから座面をたたむと、車輪の摩耗を防ぐことができます。

また、車いすに人が乗っているとき、プールでは滑りやすいので、ご本人が歩くときも介助者が歩く時にも、転倒や滑りに注意が必要です。日常生活で例えるなら、雨の降り始めのような意識をもっておくとベターです。
介助者はかかとからキチンと歩いて、グリップ部分をしっかり握り、自分と相手の転倒防止に努めた方が良いですね。

全身介助が必要な方はとりわけ、プールの中に入るときと上がるときに、介助者が一人いればよいのか二人必要なのかも考えておきます。
プールサイドは滑りにくくするために面がざらざらしていたり、タイルになっていたりすることが多く、水着や肌がこすれてしまうので、移譲するときにビート板やマットをクッション代わりに敷いて使うことでこすれを軽減できます。
入るときには、クッション代わりのビート板を使って、プールの中に座面を傾けるようにして使うと、入りやすくなります。二人介助者がいるときには、プールの中に子供が入る際プールの中に一人が入水しておき、滑るように下りて入ってきた子供を受け止めることができるようにします。浮きわやヘルパーなどの浮き具をプールの中で使いたいとき、この移譲中につけるとスムーズな方が多いようです。いつ道具をつけるのかのタイミングも考えておきましょう。
プールから上がるときには、あらかじめビート板(マット)を座る位置においておき、上半身がプールサイドに腰かけられるような姿勢を一度とってから、下半身もプールから出ます。お尻を中心に、ビート板(マット)の滑りを利用して体を回転させるととても楽に体の向きを変えることができます。
部分介助が必要な方はご自身で移動できる部分がどこかを検討して、安心できる入り方や上がり方を考えておきます。

プールサイドとプールのオーバーフロー部分(水が流れるところ)に段差があれば、それを利用してプールに入るとスムーズです。

普段の介助にプラスして、少しの工夫でできること、安全が保たれることが多いことに気が付きます。