子供の身体障害の特徴や対応について 聴覚障害編

こんにちは!
東京三鷹市のパーソナル水泳インストラクターの酒井やすはです。

今回は聴覚障害をテーマにお送りします。

聴覚障害は聞こえにくさに障害があるので、見た目で障害とは分かりづらく、そのことで本人が周りへの理解を求めにくかったり誤解をされることも多くあります。

聴覚障害がなくても、耳の遠いお客さんはプールにたくさんいらっしゃいます。
プールではどうやって解消していけるのか考えていきましょう。

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こちらでは障害の表記を「障害」とさせていただきます。
福祉畑で働いていると、「表記よりも中身の方が大事だ」と思う反面、やはり気にされる方もいらっしゃると思うので、その理由を説明いたしますと、一つに私自身とその周りの方は表記よりも中身についてしっかり話し合う仲間が多い環境で生きてきたということと、音声読み上げソフトにかけた際に「障がい」表記では「さわりがい」等と誤った情報をお伝えしてしまうため、「障害」表記に統一させていただいております。

障害のあるなしに関わらず誰もが暮らしやすい社会となることを願い、お伝えしていきます。
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聴覚障害ってなあに?種類はあるの?

人間の耳から音という空気の振動を耳から感じ取り、神経を通って脳へ「音が聞こえた」と伝わります。
簡単に言えば、この耳に何かの理由で音を伝えることが難しいものを「伝音難聴」、内耳から聴神経の働きがうまくいかないものえお「感音難聴」と言います。

伝音難聴は、治療や補聴器をつけるなどの対応で聞こえやすくなりますが、感音難聴は神経や脳の「聴覚」に関わる部分に障害があるため、手術や補聴器で対応できるものではありません。耳から振動は来ているのですが、脳がその信号を受け取るのが難しいという状態なのです。二つが混ざった混合性難聴もあります。

聴覚障害って原因はあるの?

生まれつき耳が聞こえない方も、病気や騒音などが原因で後から障害が出てくることもあります。赤ちゃんのときに高熱を出したり、まだ生まれる前にお母さんが風疹などにかかって赤ちゃんに影響がでることもあります。
また、健聴で生きてきても、誰でも年を重ねていくと耳が聞こえづらくなります。

聴覚障害の特徴ってあるの?

聴覚障害と一言で言っても、聞こえの程度や難聴の種類は様々です。左右一方の耳が聞こえにくいときもあれば、両方聞こえにくさを感じる方もいます。

補聴器があれば安心?

補聴器は音を大きくする機械で、耳に引っ掛けるタイプや耳の中に入れるタイプがあります。その人の聞こえ具合に応じて調整をしています。精密機械のため水に弱く、プールやお風呂では外します。
私たちは聞きたい人の声を聞こえる、音を聞くというように無意識に脳で選択していますが、補聴器は雑音も含めてすべての音が大きく聞こえるので、周りが騒がしい駅や広場では、
聞こえづらくなることもあります。
補聴器の中には雑音を小さくする機能がついたものも出てきています。

人工内耳ってなに?

感音難聴のような神経が原因で聞こえづらい難聴の場合、神経に直接電気信号を与えて聞こえやすくするような人工内耳という機械があります。頭と耳からポータブルラジオのような機械へコードがつながれています。頭の中に機械を埋め込む場合もあり、このときは手術が必要となり、病院で相談する必要があります。

話し方、いろいろ

読唇と言って口の形を読んで会話のヒントにしている方、ホワイトボードや紙などに書いて会話する筆談、手話で会話する方といらっしゃいます。
どれか一つだけではなく、組み合わせてその場その場の状況や相手に合わせて使い分けているようです。

便利なようにも見えますが、読唇では相手の正面からでないと、また早いと読み逃してしまいますし、似たような口の形では読み違えてしまいます。例えば「校長先生」と「教頭先生」では、全く声を出さないで言ってみましょう。なかなか見分けがつきにくいですよね。
筆談は確実に伝わる一方書く時間がかかりますし、手話には方言や英語などで話し方が変わってくるので初めて見たものや新しい言葉では分かりにくいこともあります。また先天性の難聴者の手話と、後天性の難聴者の手話ではやり方が違います。

指文字と手話の違い

手話は一つ一つの言葉を表していますが、指文字は50音表の一音一音を表しています。
手話ができる方はあまり指文字を使う方が多くない傾向にありますが、健聴者が指文字から手話を習い始めることもよくあるため、確実に「わ・た・し」等と一音一音はっきり伝えるときや、新しく入ってきた言葉でまだ手話が作られていなかったり統一されていなかったりするものなどは指文字にしてひとまず伝えるなどして使っていることもあります。

聞こえにくいから発音もしにくい

聴覚障害は他に障害がない限り、口に障害はないので声を出すことはできます。
ただ、人により個人差がありますが、聞き取りにくい音は発音もしにくく、変な発音に聞こえてしまう恥ずかしさなどもあって声を出しにくいと思う方もいらっしゃいます。
「さ行」の発音がしにくくて「シャ、シ、シュ、シェ、ショ」と発音してしまうなど、周りからろれつが回っていないように見られることもあります。これも声を出さないで言ってみると、口の形が似ていることが分かります。目で見て理解するには、舌の動きを知る限界もあるようです。

話の流れを止めるのは…

自分に話しかけられていることが分からず、その場の雰囲気で何となく返事をしてしまい、質問したら悪いだろうとそのまま流してしまうこともあるようです。

また、大勢の話ではついていけなくなります。中には「読唇」と言い、口の形の動きを読んで何を話しているのか推測しながら話している方もいらっしゃいます。そのため1対1なら話ができても、ワイワイガヤガヤするおしゃべりの場では、大事なことも聞き逃しがちになります。正面から話したり、名前を呼んでから話したり、順番を決めて話したりするなどで、会話についていくことができます。子供が一人ぼっちになることもなくなります。

道具もいろいろ

音が聞こえにくいことで、机をたたいて相手に何かを知らせたり、目の前に手をひらひらさせて気づかせたりなど独特のコミュニケーション術を持っている聴覚障害者ですが、それだけではありません。
補聴器以外にも、いろいろな道具を使っていることがあります。
音だけでなく光がフラッシュして危険を知らせてくれる「火災報知器」や「電話・ファックス」、振動で時間を教えてくれる目覚まし時計などがあります。
また電話のように会話したいときは、テレビ電話機能のあるアプリを入れて会話したり、ファックスやメールを使って文字で伝えるなど、私たちが普段使うようなものと同じもので会話しています。
手話には「を、に、が、は」のような「助詞」がなく、「わたし、たべる」のように言葉の並び順で文章をつくります。そのため子供のうちから文章の助詞を使う練習もしていますし、助詞を間違えても意味が伝わるような文章があっても、分かる人が間に立ってお互いにフォローすることも必要になります。聴覚障害の子供に助詞の使い方を伝えたり、健聴者の子供にどうしてそうなったのか理由を説明することで、トラブルは起きません。

水泳をしたい!そんなときのあれこれ

普段補聴器を付けているときは?

補聴器は水に弱い精密機械です。プールでは外すことが求められるので、補聴器を外した時の方法を確認しておきます。
確認しておかずにプールに入ると、本人はいつもより音が聞こえにくくなり、また練習も周りを見ながらどんな練習なのか想像したり、練習を終えてプールから上がったりするので、人よりもタイミングが一歩遅くなりがちです。
目で見てわかるように、回数を指で示したり、はっきり大きな口で発音して説明したり、ラミネートカードで練習内容を伝えたりすると分かりやすいようです。手話が分からなくても、確認できる方法でもあります。

独特のコミュニケーションにびっくりしない

手話を使っている方の多くはほとんど聞こえないか全く聞こえないことで、確実に手話の方が話が伝わり楽だから使っています。

周りから注目してもらいたいときにも身振り手振りで表現します。

手のひらをひらひらして「こっちです」と合図したり、水面をバンバンたたいて「ここです」と合図することもあります。
拍手するときも音が聞こえないので手をひらひらさせて表現しています。目で見てわかるものや、振動を使って会話しているのです。
ただこれは健聴者にはない独特の「文化」のように見えますし、特別支援学校の中で生活してきた聴覚障害者にとっては当たり前のもので、初めて見たときにお互いが「なぜ?」となることも少なくありません。
聴覚障害者は決して物をたたいているわけではなく、また健聴者は物をたたいて何かを伝えることは少ないことを知ってもらうなど、お互いの理由があることをお互いに知るだけでもお互いの誤解を防ぐことができます。

プールの中では?

プールの中では補聴器を外すため、インストラクターの話を聞くときは、前に来てもらったり、半円形にして誰もが口の形を見やすくしたりなど工夫できます。説明をしているときは、周りに静かにしてもらうなど、学校と同じ配慮で難なく練習できます。また後ろから声をかけるとより本人が分かりにくいので、名前や一言かけてから話すようにします。左右どちらかの耳が聞こえにくいなら、聞こえやすい方から回って話しかけるなどで気づいてもらいやすくなります。

練習内容が変わるときも、例えばビート板をもってから「この練習をします」という方が伝わります。同様に練習が終わるときにビート板を置いてから「終わります」という方がスムーズです。聴覚障害の子どもたちは聞こえにくい分、相手の顔の表情をしっかりみようとしていますので、ビート板を顔の横に持ってくるなど、動作は顔の近くで行うことも大切です。
また、きちんと伝わったのか「こうだよ」「わかったかな?」と確認することですれ違いを防ぐことができます。

特に重要なポイントがあるなら、ホワイトボードやラミネートをかけたカードを使うなどして練習内容を分かりやすく示しておくこともできます。

泳ぎをスタートするときも「前の人が5m泳いだら、次の人が出る」「時計の針を見て10秒間隔でスタートする」というルールを作れば道具がなくても今すぐできます。笛の代わりに旗やタンバリンなど目で見て分かるものを使うことで解消できます。

一緒に普通に水泳できる

「聴覚障害」に限らず、障害者も健常者もお互いに手助けしあえる環境は大切です。体は元気なのでやり方が分かれば泳げますし、どちらかといえば泳ぐまでの準備の方にアレンジポイントがあります。
どちらかが「特別扱い」と感じたり、「なんでもお手伝いします!」と本人ができることをとってしまうようなことがないよう、「お互いに耳の聞こえに差はあるけど、普通に水泳楽しめるよね」という雰囲気作りができるように考えます。