子供の身体障害の特徴と対応について 視覚障害編

こんにちは!
東京三鷹市のパーソナル水泳インストラクターの酒井やすはです。

今回は、視覚障害をテーマに、どのように水泳を楽しむことができるのか、障害についての説明に加えて、実際のプールでの現場を考えて、みなさんのご参考になればと思い記事にしました。

目の見えにくい方は障害者だけではなく、高齢者にも普段から眼鏡をかけて過ごすOLさんなど、数多くいらっしゃいます。
大規模な工事をしなくてもできることがある、そんなご参考になれば幸いです。

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こちらでは障害の表記を「障害」とさせていただきます。
福祉畑で働いていると、「表記よりも中身の方が大事だ」と思う反面、やはり気にされる方もいらっしゃると思うので、その理由を説明いたしますと、一つに私自身とその周りの方は表記よりも中身についてしっかり話し合う仲間が多い環境で生きてきたということと、音声読み上げソフトにかけた際に「障がい」表記では「さわりがい」等と誤った情報をお伝えしてしまうため、「障害」表記に統一させていただいております。

障害のあるなしに関わらず誰もが暮らしやすい社会となることを願い、お伝えしていきます。
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視覚障害ってなぁに?

視覚障害とは、生まれつきか病気や事故が原因で、目そのものか視覚情報を受け取る脳かあるいは両方に傷ができて、周りの景色が見えにくいか全く見えず、目の中では像ができていても脳でそれが何なのか受け取ることができずに真っ暗に見えてしまうなどの、視覚に関する障害です。

見え方の種類は様々です。視野狭窄といった見える範囲が狭かったり、眼鏡をかけても霧がかかったように見える「ピンぼけ状態」だったり、中心暗点という視界のまん中が眩しかったり白く抜けて見えたりしている方と様々です。
色盲と言って、複数の色が同じに見える障害もあります。その場合、3色に色分けしたはずでも全てグレーに見えるなど、色分けしたことの意味が薄れてしまうこともあります。
全く光を感じることができないものを全盲と呼びます。

また、点字を読めることのイメージがありますが、全員が点字を読めるわけではありません。
デイジーなどと呼ばれる音声記録のデータを聞いて本を読んだり、視覚障害者の方用の点字を打てるパソコンなど色々な道具があり、使い分けたりしていらっしゃいます。

視覚障害の原因はあるの?

生まれつきの場合はなぜ障害が出るのかわからないことも多くあります。
一方で後天性のものは、糖尿病の二次障害といった病気や、事故による失明など原因がはっきりしているものもあります。

普段はどんな風に感じているの?どうしたらいい?

声かけのときに名前を呼ぶ

弱視の子供のとき、音は聞こえて「集合しなきゃ」などの意味も分かっていても、全員が同じ色の水泳帽子だと、どこに並べば良いのか見分けがつかなくて並べなかったりします。迷子状態になるのです。
また、泳いだり歩いたりして移動したあと、もとの場所に戻れない不安からその場を離れたくなかったり、しらない友達の声を覚えるまでに時間もかかります。プールの構造上、音が反響しやすく、賑やかだとより声が混ざりあって分かりにくくなります。
自分に声がかけられていることが分からないこともあります。

そこで、名前を読んでから話しかけるなど、すぐにできることでかなり不安が解けます。
挨拶するときでも、自分に話しかけられていることがわからないので、名前を読んでからあいさつすれば、子供本人もお友だちも安心ですよね。

指事語はなるべく避けて

指示語、いわゆる「こそあど言葉」を使わずに説明しましょう。
つい目が見えると「ここを見て」「あっちへ向かって泳ぐよ」と言ってしまいがちですが、慣れればなんてことはないものです。

本人がプールで迷子状態になったら、いきなり手を引くと「暗闇でいきなり体を振られてしまう」恐怖を感じます。
一声かけてから、腕や肩に手をもってもらって半歩先を歩いたり、階段前で一旦止まるなどするとより分かりやすい案内になります。

見えにくさを知ってもらう

私たちはよく見えないときにじっと眉間にシワを寄せて細目にしてものを見ることがありますが、弱視の子供の場合も同じでじっと目を凝らして見るので、それが時におこっていたり不機嫌なように見えることがあります。誤解されないように本人の見えにくさを周りの子供たちにも分かってもらいます。

「視野狭窄でここだけなら見える」「手元がよく見えない」など具体的に知っておくことで、遊泳中の衝突も防ぐことができます。
子供たち同士で、ゴール付近で声かけなども自然にできてきます。

道具にアレンジをしてみては

ものが見えにくいために姿勢が悪くなることも多くあります。ビート板などの道具を取りに行きたくても、見えにくいことで動きが遅くなったり、使った後にどこに置いたのか位置関係が分からなくなって出しっぱなしになることもあります。そのまま忘れてしまうこともあります。

持ち物に鈴やマークをつけるなど、どこかへ落ちても分かるような工夫ができるなら、それを認めてもらうことも検討します。マークを付けるとき、相手が色盲の方なら何色が分かるのか確認しておくことが大切です。
こうしてプールサイドにものが落ちてないことで、ものが壊れたり子供の転倒などの予防にもなります。

プールではどんなふうに感じるの?どうしたらいい?

プールで起きやすいことをピックアップしてみました。
気になるところから読んでみてくださいね。

その人独自の道具の使用を考えてみる

眩しくて普段からサングラスをかけている子供なら、黒のゴーグルをつけておくと軽減されます。視力の問題なら、度付きのゴーグルをかけるなど見えやすくしたり、周りの子供たちと協力して誰もが声を掛け合ったり、同じ色の帽子をかぶって見分けやすくするなどで、子供が安心して練習に参加できます。
プールサイドを歩くときにゴーグルをかけて歩くようになるかもしれません。その意味を周りの子供たちにも知ってもらうことで、からかいをなくすこともできます。

日常生活で白杖を使う子供がいたら、あらかじめ濡れ雑巾を用意して杖の先を拭いてもらい、プールサイドでの使用を認めるなどして対応できます。

盲導犬と一緒に暮らしている人のとき

プールまで盲導犬と一緒に行く方の場合、どこまで犬が来ても良いのか、本人が泳いでいる間の犬はどうするのかの確認は必ず必要です。アレルギーを持っているお客さんもいるからです。
現実問題として、プールサイドに盲導犬を連れてくることはかなり難しいものです。
「犬が入れないスペースでは白杖を使えないか」など一緒に考えていきたいものです。

頭に地図を書いてもらう

プールがどのような構造になっているのか、大きな地図を用意したり、触りながらどんな場所なのか、どこに何があるのか知ってもらったりします。

位置関係を知ってもらう

本人が触ることができないとき、大きくした地図を見せたり、右手に何があるのか、時計周りに何時の場所に何があるのか伝えたりなどで解決できます。

見えにくい分、声を覚えれば誰だかすぐに分かるようになり、またプールに通いなれたら音の反響から自分がどのくらい歩いてきたのか分かるようになり、スタスタ歩いていけるようになります。

ものの位置が変わったり、沢山のものがあれば随時伝えて地図を上書きするお手伝いをすることで、本人の不安も解消できます。

オーバーフローを確認する

プールサイドとプールの境目に段差がないプールがあります。これをオーバーフローと呼ばれる部分ですが、視覚障害の方がプールサイドに来たときに、オーバーフローがないことを知らずにそのままプールに落ちて事故につながる危険もあります。
とはいえ、点字ブロックがプールにいつもあるわけではありません。位置関係を知ってもらうことも事故の防止に重要なことです。
もしオーバーフローがないプールなら、予めそれを伝えてプールサイドとプールに段差がないことを伝えておきます。
白杖を使用して段差や床のタイルが排水のタイルへ変わる様子を知ることができるなら、白杖の利用も考えます。

泳ぎを伝えるにはどうしたらいい?

泳ぎを説明するには?

視覚障害のある子供は、運動が苦手というより、見て真似して覚える作業がしにくいので、運動することにとても勇気がいります。
例えば視覚障害のランナーは、走っているところを見て走っているのではなく、言葉や体を触ってもらいながら練習を重ねて走れるようになります。お話を伺っていると、なかなか動きのある中で触っていることができない「スキップ」は特に難しかったと聞きます。
インストラクターが泳ぎ方を説明するときにも、本人の体を見本にして、体の位置関係を「頭から拳1つ分離れている」「手のひらはこの角度で」と子供が自分でできるようにお手伝いする感覚で説明すると分かりやすいようです。完全に光が感じ取れない「盲」の方も同様です。
スキップと同じように、泳いで進んでいるときの補助は難しいものです。
体を動かして体の地図を頭に作り上げていくサポートをしていきます。インストラクターの体や人形のモデルを触ってもらい、泳いでいるときの体の形や角度、筋肉の緊張の抜き方などを理解してもらうこともできます。

距離を確認するには?

競泳用プールにはスタート側とゴール側に5メートルラインがあり、これを目安にターンやタッチまでの距離を確認していますが、弱者や盲の方はわからず、クロールであっても頭から壁に衝突したりすることもあります。
障害者用プールでは5メートルラインに泡が出ている施設もありますが、一般的な公共のプールではなかなかないので、腕を何かきしたらゴールになるのか数えたり、5メートルラインで肩を軽く叩いて教えてあげたり、タッピング棒の使用を認めてもらうなどで事故を防いで誰もが安全に泳ぐことができます。

「目で見て安心」は「誰もが安全に泳げる環境づくり」に役立ちます。
大規模な工事をしなくてもできることはたくさんあります。お互いが気持ちよく過ごせる方法を見つけられると良いですね。