子供の発達障害の特徴や対応について 学習障害編

こんにちは!
東京三鷹市のパーソナル水泳インストラクターの酒井やすはです。

発達障害についてシリーズでお伝えしています。
今回は学習障害についてお送りします。

学習障害とは知的障害とちがい、特定の分野だけ極端に苦手が目立っていることが特徴です。そこには、学習障害の方独特の情報の処理や景色の見え方の違いがあります。
運動分野に障害が出ているとき、インストラクター含めて周りの人とどのように協力できるのか、プールでの対応も含めてみてみましょう。

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こちらでは障害の表記を「障害」とさせていただきます。
福祉畑で働いていると、「表記よりも中身の方が大事だ」と思う反面、やはり気にされる方もいらっしゃると思うので、その理由を説明いたしますと、一つに私自身とその周りの方は表記よりも中身についてしっかり話し合う仲間が多い環境で生きてきたということと、音声読み上げソフトにかけた際に「障がい」表記では「さわりがい」等と誤った情報をお伝えしてしまうため、「障害」表記に統一させていただいております。

障害のあるなしに関わらず誰もが暮らしやすい社会となることを願い、お伝えしていきます。
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学習障害ってなあに?

人間の脳は認知機能と言い、見たり聞いたりした五感を理解する処理をしています。
例えば「ドッチボールをしていて自分の目の前にボールが飛んできた」と目からの情報を受けて、脳に「ボールが飛んでくる」という情報が伝わると、「ボールをキャッチしよう」「スピードが速くてとれそうにないからよけよう」など脚や手といった運動器官に命令を出します。
この働きのどこかがうまく働かず、偏りが生まれたり、「ボールは見えてはいたけど、腕に信号が伝わらずに取れなかった・脚に信号が伝わらずよけられなかった」という障害が生まれてきます。

学習障害の原因は?

他の発達障害と同じく、根本的な原因は明らかになっていません。中枢神経の働きで、うまくものが見えなかったり、行動に起こせなかったりといった支障が出てきています。

学習障害の特徴は?

学習障害の子供は学校で「鏡文字を書く」「似たような数字や字の区別がつかない」「位置関係が分からないからうまくひっ算を書けない」などのつまづきをもっています。

どのように見えているの?感じているの?

・そもそも文章が重なって見えてしまっていて、一文一文読めない。
・文字が鏡文字に見えてしまい、その通りに書いてしまう
・補助線がないものは特に位置関係が分かりにくいため、ひっ算の桁がずれる
・似た音を聞き間違う
・注意を向ける音が違えば聞き漏らすことがありので、何回も先生に尋ねる
・短期記憶がうまくできない方の場合、すぐに聞き返す
・体育の場面で、左右逆転したりすることが分かりにくい
・細かい作業が苦手

プールで起こり得ること

体を動かしたり、姿勢やバランスを保つことが難しい方もいます。
目の前で、鏡にならない全く同じ動きをする見本の人がいると分かりやすかったり、なるべく大きな動作をして流れを覚えるところから始めることもできます。

繰り返しの学習でいいの?

水泳は同じ動作を繰り返し行うスポーツです。
繰り返し繰り返しの学習は大切ですが、何を繰り返すのかが重要です。
学校現場では「間違った字はノートに書いて練習して」と言われることが多くありますが、「正解の字ではなく間違った字を書くの?」と脳が混乱してしまいます。
ただ機械的に反復するのではなく、確認するポイントを「腕だけ」などと一つに絞り、そこだけ意識する練習にして、できるようになる環境や工夫があるととても分かりやすいレッスンになります。
例えば、ヌードル(ビート板のような浮き具で棒状になっている)をお腹の下に入れて下半身を浮かせ、腕の回し方に集中できるようにしたり、目印を見つけたりインストラクターの手を見ながら目線をここにするように伝えるなど、道具を色々試してみたり工夫してみたりして、体の動きを覚えていくところからやってみることも自信につながります。

いつでもだれでも聞いていい

泳ぐ主役は子供たちです。
他の子供たちの中にも、「この泳ぎ方で合っているのかわからない」と質問したくても、恥ずかしかったり、聞きにくかったりして困っている子供もいます。

学習障害の子供に限らず、練習中に子供が理解しているのか、また道具を使うことで「私はできていないんだ」と思われないような工夫をすることもインストラクターの仕事だと思っています。
「ヌードルを使って泳いでみたい人~?」と誰でも道具を使って泳ぐことのできる環境にしたり、自身がある程度ついてきたら「道具無しでやってみたい」と子供の方から声が上がり、本当にうまく泳げるようになったら「邪魔だからいらない」と子供の方から道具を卒業していきます。

子供同士で、「こうすると泳ぎやすいよ」「あのキャラクターのこの攻撃と似ているよ」などなど、大人の知らない世界観の中で、教えあったりしていく環境も生まれていいと思っています。
学習障害の子供は、苦手な分野を補うために「数をばらして計算していこう」などと工夫していることもあります。そのやり方や考え方が、周りの子供の分かりやすい説明になり、アドバイスになることもあります。

学習障害の子供たちの中には、自分のできないことを「できない」と言えず、ごまかしたくて「ふざけたふりをしよう」と全く違うことをする子供もいます。
こうしてふざけたことが、水の事故や人間関係のトラブルになっては、雰囲気も悪くなってしまいます。
質問しやすい環境はプールの中でも必要なことなのです。

イメージがつけばやりやすい

ボールを投げるときの力加減や、ものを推測して「これをしたらこんな結果が出そうだ」と考えることが苦手なことも学習障害の子供の悩みです。

水泳でも同じで、バタ足の力加減や腕の回す強さなどが分かりにくく感じられます。
座った状態で自分の脚を見ながらバタ足をして、脚にあたる水の感覚を知ったり、あらかじめインストラクターが「こんな風に水が流れる感じがあればOK」と腕や足に水を当てて説明すると分かりやすいようです。

力の加減は、子供が実際に泳いだところを基準に「このときはレベル1で」「空回りしていたらレベル10でやりすぎだから、7まで落としてみよう」などとイメージしやすい数字で表すこともできます。

インストラクターの言葉が難しいと、その言葉に気を取られてしまい練習に集中できないので、分かりやすい言葉に直したり、言葉の意味を伝えたりして誰もが理解できるようにします。
学習障害の有無にかかわらず、障害のある子供は「みんなと同じようにできるようになりたい」と思っているのです。「こんなの簡単だよ」と言われてしまうと、そこにつまづきを感じている子供もいるので、自信ややる気をなくしてしまい、プールが嫌いになる原因になってしまいます。

説明は覚えなくていい

また、水泳の練習という特性上、多くのプールでは「インストラクターが説明したことを覚えて、もう一度泳ぐ」環境が多くあります。
学習障害のために「短期記憶がうまくできない方の場合、すぐに聞き返す」ことがあります。
学校のように、物を書くことができない環境なら、あらかじめ練習内容を絵にしたラミネートカードを用意して、「何の練習をどのくらいやるのか」貼っておくなどして、泳ぎに集中することができます。
これは他の子供にとっても分かりやすいレッスンになります。

水泳とは体全体を動かすスポーツです。
子供により、どこから練習したら泳げるようになるのか、それは階段ではなく球体上のステップアップです。
AとBの動きがリンクしていくことが早くできる子供もいれば、AとGの動きがリンクして早く泳ぎを覚える子供もいます。

自分に合ったやり方で練習できる、それが優劣や絶対的に決まった順序でやることが重要なのではなく、最終的に一つの泳ぎを完成させることがゴールなのです。
パズルはどこから始めてもいいのです。いくつもある穴を最終的に埋めていけばいい、本来のゴールはどこなのか、そこからレッスンそのものを見直してみることも大切です。